増殖性硝子体網膜症とは
網膜色素上皮細胞から神経網膜が剥がれている網膜剥離や、高血糖により網膜の血管に異常が起きている糖尿病網膜症が悪化して起きる病態です。
[1]網膜剥離や糖尿病網膜症が長く続いた場合や、網膜剥離の手術で裂孔が完全に塞がらなかった場合に、傷を治そうとして網膜の表面や硝子体内に線維性の細胞が増えます。
[2]増えた線維性の細胞から、硝子体と網膜の間に増殖膜がつくられます。
[3]増殖膜や硝子体が縮んで網膜を前方に引っ張るため、網膜が剥がれてしまいます(牽引性網膜剥離)。
原因
網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、不適切な網膜剥離の手術によって起こります。
症状
網膜が剥がれた範囲に応じて視界が黒いカーテンで遮られるような視野欠損が起き、剥離が物を見る中心の黄斑部に達すると急激な視力の低下が起こります。放置すると失明してしまう可能性が高いです。
検査・診断
目の奥にある網膜を外から観察しやすいように瞳孔を広げる薬を点眼して行う眼底検査や、網膜の断層を観察できるOCTによって診断することができます。硝子体の出血や混濁が強くて眼底を観察しにくい場合には、超音波検査のBモードも有効です。
治療・予後
ただちに硝子体手術をする必要があります。剥がれた網膜には栄養が十分に行き渡らず、一度死んだ神経細胞は元に戻らないため、網膜が剥がれている期間が長いほど、手術が成功しても視力は回復しづらくなりますが、さらに視力が低下して失明することや、眼球自体が縮んでしまうことを防ぐことができます。
手術について
硝子体手術
[1]強膜から硝子体内に外径1ミリ以下の器具(還流液の注入針、眼内照明、硝子体カッター)を挿入します。
[2]眼内照明の光を手がかりに、硝子体カッターで硝子体を切除し、増殖膜を剥がして、網膜を引っ張る力を取り除きます。
[3]パーフルオロンなどを注入して網膜のしわを伸ばし、網膜色素上皮細胞の上に戻します。
[4]網膜裂孔の周囲をレーザーで焼き固めて接着し、完全に閉鎖します。
[5]必要に応じて硝子体をSF6ガスやシリコーンオイルに置き換え、網膜を押さえます。 ガスを注入した場合は、空気より軽いガスが眼の外に出ないように手術から1週間程度うつむきの姿勢で安静に過ごしていただく必要があります。
a.硝子体を切除し、増殖膜を剥がします
b.網膜を伸ばし、元の位置に戻します
c.裂孔周囲をレーザーで凝固・閉鎖します
d.ガスやシリコーンオイルで網膜を押さえます