近視とは
近視は一種の屈折異常で、遠方から目に入ってきた光が網膜より手前で像を結び、物がぼやけて見える状態です。
近視は眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が正常より長すぎるか、角膜・水晶体の光の屈折力が強すぎることにより起こります。
近視の原因について
現在では「調節ラグ理論」と「軸外収差理論」の2つの説が有力とされています。
調節ラグ理論とは?
人は近くを見る時に目の中で力をかけなければならず、その力がかかることにより近方へピントを合わせます。このことを調節といいます。調節力は距離が近くなるほど大きなものになります。 調節ラグとは近距離を見ようとするほど調節反応が鈍り、次第に焦点(上図参照)は網膜の後方へずれていくことをいいます。
通常は、目の焦点深度(一度にピントが合う範囲)によって調節ラグによるぼやけは自覚されません。ところが、この調節ラグが長時間続くと、その誤差に順応するように眼軸長が伸びる(近視が進行する)といわれています。 つまり、後天的に眼軸が調整されているのです。
ですが、本来は水晶体の厚みを変えてピントを合わせることができます。
それができていれば像はボケず、眼軸長は伸びていないはずです。
実は、近くを見る時にピント合わせをしきれていないのです。特に子供の場合はピント調節不足になっていることが多く、この状態が前述した調節ラグなのです。
このことから、調節ラグによって網膜像がボケたままになっているために近視になると考えられています。
軸外収差理論とは?
前述したのは、黄斑という視力を司る部分の話にとどまりましたが、この理論は黄斑だけでなくその周辺部のボケが近視を進行させるというものです。
眼は球体であるため、通常の眼鏡やコンタクトレンズを使用すると黄斑にのみ焦点が合い、その周辺はぼけてしまいます。そのため眼軸長が伸び、近視が進行するというものです。
尚、同じピントが合わない状態でも網膜の後ろにピントが合う状態(遠視)の場合は眼軸長が伸びやすいですが、網膜手前にピントが合う(近視)場合には眼軸長延長を抑制するという実験結果が出ています。
眼鏡やコンタクトレンズを使うことで近視の進行を抑制することはある程度可能です。
しかし、軸外収差理論の項目で述べたように、通常の眼鏡やコンタクトレンズだと網膜周辺部のボケによる近視の進行が起こりえます
近視(進行抑制)
- 一般的に8~16歳で近視は進んでいることが多く、6・7歳で近視が出ると強度近視になる可能性があります。
- 一年間で-0.75D以上の進行は進みすぎと考えられます。
- -8.0D以上の強度近視は40歳以降、緑内障・黄斑変性・黄斑出血・網膜剥離などのリスクが大きくなるため、そこまで進行しないように抑制することが望ましいといわれています。
医学的に根拠のある進行抑制法は以下の通りです。
- 2時間以上、外で遊ぶ。(太陽の光を浴びる)
- スマホ、勉強、読書などは30cm以上離す。
- 30分間近くを見たら2分ぐらい休めて、また30分行う。続けては行わない。
- アトロピン点眼(マイオピン®)*1は50%位、多焦点ソフトコンタクトレンズは25%~40%位、オルソケラトロジーは40%位進行抑制効果があるという報告がある。
※まず進行抑制法1・2・3を守ってみてください。
半年後、近視変化を見て-0.5D以上進んでいて強度近視が心配な時は4を考えてみるとよいと思います。
- 眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が伸び近視が進行し強度近視になると、前述のように40歳以降緑内障・黄斑変性・黄斑出血・網膜剥離などのリスクが大きくなります。一度長くなった眼軸は元に戻すことは出来ないので、眼軸長の伸びを抑制してあげることが重要です。
レーシックやICL等では角膜を削ったり、レンズを挿入することで屈折を矯正し網膜の手前に合っていたピントを網膜上で合うようにすることは出来ますが、一度伸びてしまった眼軸長を元に戻すことは出来ません。
眼軸長の伸びを抑制するには、オルソケラトロジーやマイオピン®*1の使用に効果があることが報告されています。
*1マイオピン®に関わる診察治療は自費診療となります。