多焦点眼内レンズ

  • 当院の保険適応眼内レンズの第1選択はレンティスコンフォート(多焦点)乱視有り、無しです
  • 2020年11月~レンティスコンフォート乱視用レンズが使用可能になりました

遠近両用眼内レンズ(マルチフォーカルレンズ)について

年齢が40歳を過ぎると、老眼(老視)が始まって近くが見えにくくなってきます。そこで老視(老眼)の治療として、眼の中にある水晶体を取り除いて、人工の遠近両用眼内レンズを挿入するという手術をすることで、メガネやコンタクトレンズなしで遠くも近くも見ることが可能となります。また、強度近視・遠視の方の屈折治療として手術を行うという方法もあります。

当院での眼内レンズの選択は次の基準に則っています
  1. まず、レンティスコンフォート(保険適応多焦点眼内レンズ)を考えます:レンティスコンフォートは2020/11から乱視用レンズも保険収載されました。
    多焦点眼内レンズの適用は以下のようにしています
  2. 術後残余乱視が-1.00D未満が予想されるなら、レンティスコンフォート
  3. 術後残余乱視が-1.00D以上-3.00Dが予想されるなら、レンティスコンフォート・トーリック(乱視用)
  4. 術後残余乱視が-3.00D以上が予想されるなら、乱視用の単焦点レンズ
  5. 不正乱視が大きい場合(円錐角膜、角膜ジストロフィーなど)は単焦点レンズの乱視無しを選択
  6. 近方30センチ位にピントを合わせるときは単焦点レンズの乱視有り、もしくは無しを選択する。
  7. 以下の場合はレンティスコンフォート禁忌なので単焦点レンズの乱視有り、もしくは無しを選択する。
    ・糖尿病コントロール不良
    ・将来、硝子体手術、内皮移植の可能性がある方
    ・抗VEGF治療中等

手術の金額について

選択される眼内レンズの種類により費用が異なります。
以下の記載の費用は片眼分です。

★単焦点眼内レンズ(乱視有り、無し)
1割負担→¥16,060
2割負担→¥18,000
3割負担→¥48,180
★保険適応の多焦点眼内レンズ(レンティスコンフォート乱視有り、無し)
1割負担→¥16,060
2割負担→¥18,000
3割負担→¥48,180
★選定療養適応レンズ
1割負担→¥16,060+選定療養適応レンズ差額
2割負担→¥18,000+選定療養適応レンズ差額
3割負担→¥48,180+選定療養適応レンズ差額

★保険適応外の多焦点眼内レンズ

選定療養について

手術時負担額:
  1. 1割負担⇒¥16,060
    2割負担⇒¥18,000
    3割負担⇒¥48,180
  2. レンズによります⇒詳しくはこちら

選定療養適応レンズの場合

[患者さんの負担額]=①+②-(①に対する生命保険支給額)

になります

☆術後の診察は保険診療となります

選定療養とは、患者さんご自身が選択して受ける追加的な医療サービスで、その分の費用は全額自己負担となります。令和2年4月より術後の 眼鏡装用率の軽減を目的とした多焦点眼内レンズを使用する白内障手術は、厚生労働省が定める選定療養の対象となりました。当院は多焦点眼内レンズの白内障手術を行う医療機関として届出をしています。

選定療養適応レンズ
多焦点眼内レンズの種類 金額(税込)
日本アルコン クラレオンパンオプティクス ¥200,000
クラレオンパンオプティクス乱視用 ¥200,000
AMO テクニスシナジー ¥250,000
テクニスシナジー乱視用 ¥270,000
テクニスマルチ ¥150,000
自費負担多焦点レンズ(術後3ヶ月までの診察検査料を含みます)
自己負担額(税込)
レンティス Mplus ¥350,000
ファインビジョン
レンティス Mplus 乱視用 ¥400,000
ファインビジョン乱視用

多焦点レンズの種類について

従来の眼内レンズでは、両目とも裸眼で遠くが見えるようになると、近くがみえにくくなります。両眼とも遠くにピントを合わせるのではなくモノビジョンといって、片眼は遠く・もう片眼は近くにピントを合わせて、遠くも近くも見えるという方法もあります。

遠近両用の眼内レンズであれば、ひとつのレンズで遠くも近くも見ることが可能となります。遠近両用の眼内レンズは基本的な種類が2種類あって、屈折型と回折型という2種類のレンズに分かれています。屈折型は遠方と中間距離にすぐれているのに対し、回折型は遠方と近方距離にすぐれています。その方のライフスタイルに合わせて、片眼には屈折型、もう片眼には回折型を入れるという方法もあります。さらに、新しいセクター型や、乱視用などもあります。すでに従来の眼内レンズが挿入されている方に関しても、眼内レンズを入れるということも可能です。

単焦点の眼内レンズ

多焦点の眼内レンズ

保険適応多焦点眼内レンズ

レンティスコンフォート
レンティスコンフォート・トーリック

  • この多焦点レンズは、保険適応のレンズです
  • 当院ではこの眼内レンズを第1選択としています
  • 両眼このレンズを挿入すると、遠方(運転、観劇等)~近方(PC、スマホ等)を眼鏡無しで見られるようになる方が多いです
  • 2020/11から乱視用が追加されました。

費用は、片眼1割負担¥16,060 2割負担¥18,000 3割負担¥48,180、
同月手術の場合、両眼1割負担¥18,000 2割負担¥18,000 3割負担¥96,760です。
単焦点レンズ適応の患者様に遠方から中間距離の快適な視力を提供します。

●Dual Monofocal Design
異なる2つの単焦点機構で、+1.50Dのマイルドな加入度数を独自の扇型デザインで組み合わせることにより、快適な視力が期待されます。
◆良好な遠方・中間視力
+1.50Dのマイルドな加入度数により、単焦点レンズと比較して、良好な遠方・中間視力の獲得が期待されます。

※①+②で手術をすると遠方から近方までの視力が期待されます。

◆不快な自覚症状の抑制
術後のハロー・グレアは単焦点レンズと同等です。
中間用ゾーンを独自の扇型デザインにし、遠用から中間用ゾーンに移行する部分は一本のラインのみになるため、光学的なエネルギーロスを抑制しハロー・グレアの発現が少なくなります。
◆焦点深度の拡張
+1.50Dの加入度数により、単焦点レンズと比較して明視域の拡大による遠方から中間まで落ち込みのない見え方が得られます。
●パワー
S:+10.00~+27.00D
※+20.00Dが正視でそれ以下は近視、それ以上は遠視の矯正と考えてください。
  • 加入度数 +1.50D
    遠方~中間距離に適しているため、近方を見るには老眼鏡が必要になります。
  • 乱視度数は3段階あり、だいたい-3.00D未満が適応となります。

選定療養適応多焦点眼内レンズ

Clareon Pan Optix(Alcon社)…

選定療養適応のレンズです。
国内で初承認の3焦点レンズです。

●回折型
遠くと中間(60cm)・近方(40cm)を見ることが出来る3焦点レンズです。
●ENLIGHTEN光学テクノロジー
中間距離から近方距離をより快適に、自然な見え方に近づけるように設計されています。
①高い光利用率88%
入射光の50%を遠方に残り25%ずつを中間、近方に配分しています。
②瞳孔径への依存を低減
回折ゾーンを4.5㎜にし、瞳孔径や照明条件からの見え方への影響を低減。
③遠方視力を犠牲にすることなく、中間距離・近方距離のより快適な見え方を提供
従来の3焦点レンズの多くの中間距離は身長2mを超える方が腕を伸ばして快適にパソコン等の作業ができる80cmになっています。PanOptixは60cmとより多くの方がリラックスして作業できる距離に合わせました。
40から80cmの連続した焦点距離が、パソコン作業・スマートフォンの使用・料理など希望のライフスタイルを実現します。
●乱視用もあります。
●パワーS:+6.00~+30.00D
●パワーC:+1.50、+2.25、+3.00、+3.75D
※+20.00Dが正視でそれ以下は近視、それ以上は遠視の矯正と考えてください。
●加入度数
+2.17D(中間)、+3.25D(近方)

TECNIS Synergy(AMO社)…

国内で認可が下りているレンズです。

●回折型
以前より発売されているテクニスマルチフォーカル(2焦点型レンズ)とテクニスシンフォニー(焦点深度拡張型)を融合したレンズで遠方から近方まで連続的な見え方を実現させました。
●角膜の色収差を補正
角膜は正の色収差を持ちます。通常、眼内レンズは正の色収差を発生させますが、独自の技術により眼内レンズに負の色収差を付加しました。全ての波長の光が収束すれば見え方はシャープになります。
異なる色の波長の焦点位置が近づくことで、コントラスト感度が改善されます
●コントラストの感度・ハロー・グレア
光のロスが12%あります。夜間の運転時にまぶしく感じる場合があります。
●瞳孔径に依存しない
回折型レンズの為、高齢になり瞳孔が小さくなっても機能の低下は無いです。
●乱視用もあります。
●パワーS:+5.00~+30.00D(0.50D刻み)
●パワーC:+1.50、+2.25、+3.00、+3.75D
※大体、+20.00Dが正視でそれ以下は近視、それ以上は遠視の矯正と考えてください。
●加入度数
焦点深度拡張での広い明視域の為、加入はありません。

テクニスマルチフォーカル(AMO社)…

国内で認可が下りているレンズです。

●回折型
遠くと近く(30cm・読書時の距離)を見ることができます。(中間は見えにくいことがあります)
回折型は一つの光を遠方用と近方用の2か所に分ける構造です。
●瞳孔径に依存しない
瞳孔が散大しても光は近方と遠方に均一に分散するので、暗闇でも見やすい設計です。
●コントラスト感度の低下
入射光を二分しているので光のロスが20%程度あり、コントラスト感度の低下があります。
これにより、若いころより見え方が劣ると感じたり、ワクシービジョンという現象で白っぽくみえたり、かすんだ感じに見えることがあります。慣れるのに6カ月程度かかります。
●乱視用はありません。
●パワーS:+6.0~+30.0D(0.5D刻み)
※大体、+20.0Dが正視でそれ以下は近視、それ以上は遠視の矯正と考えてください。
●近用加入度数 +4.0D
※大体、30cmの距離=読書時の距離が一番見えると考えてください。

保険適応外多焦点眼内レンズ(自費)

LENTIS Mplus(oculentis社)

ドイツで製造されており、日本ではまだ認可されていませんが、ヨーロッパではCEマークを取得しており、すでに多く使用され、非常に良好な結果を得ています。

●セクター型(セクター部で近方視が可能なデザイン)
近く(30~40㎝)と遠くをみることができます。
カーブの違う二つに球面を組み合わせてできています。両方の球面の中心は同じところにあり、遠方部と近方部の境目がないので遠方視から近方視がスムーズにつながっています。(上左図ではわかりやすくするために分けて表示しています)
●コントラスト感度が良好
光学的ロスが5%であり、95%は焦点するため、コントラスト感度が良好で白内障のない人と同等程度です。
●瞳孔径に依存していません
高齢になり、瞳孔が小さくなっても機能の低下はないです。
●ハロー・グレアがありません
●パワー S: ±0.0~+36.00D(0.5D刻み)
※大体、+20.0Dが正視でそれ以下は近視、それ以上は遠視の矯正と考えてください。
●加入度数は+1.5と+3.0があります
●乱視用もあります
パワー S: ±0.0~+36.00D(0.01D刻み)
※大体、+20.0Dが正視でそれ以下は近視、それ以上は遠視の矯正と考えてください。
乱視: +0.25~+12.00D(0.01D刻み)
通常0.5D刻みが多いですが、乱視用は0.01Dまで細かく対応しています。そのためレンズはすべてオーダーメイドになり、レンズが届くまでにお時間はかかりますが(最低でも6週間)、しっかりとその人に合わせることができます。