眼科便り

ポジティブ・ネガティブ ディスフォトプシア(Positive・Negative dysphotopsia : PD・ND)

2025年5月19日

白内障手術後に光が眩しく感じたり、光の輪が見えたり(positive)、視野の耳下側に暗い影や「カーテン」のようなものが見える(negative)状態を指します。ほとんどの場合時間経過とともに改善します。

症状:耳下側に以下のような症状が出現

positive dysphotopsia:PD

グレア: 光源の周りにぼやけた輪が見える

ハロー: 光源の周りに虹色の輪が見える

スターバースト: 光源から放射状に光が伸びて見える

negative dysphotopsia:ND

明るい光の条件下で特に目立つ暗い影が側頭視野に弧を描いて見える。

原因:

主な原因は、白内障手術で挿入する眼内レンズの素材やデザインが光の屈折に影響を与えることと考えられています。(例:光学部径6mmレンズのedgeで乱反射)
他にも瞳孔のサイズ、強い遠視、視軸と瞳孔軸の間の角度および前嚢に対する光学部の位置などの複数の要因が関連すると考えられています。

治療:
  • 経過観察:多くのケースでは、適応により時間とともに(手術後6〜12か月)改善。
  • 瞳孔管理:薬物で瞳孔のサイズを調整することで症状を緩和。
  • Reverse Optic Capture(ROC):レンズ支持部は水晶体嚢内のままで、光学部のみを水晶体嚢の外側に出す。
  • 図
  • ピギーバックIOL:既存のIOLの上に二次的なIOLを挿入することで、光を分散させ影を減らす。
  • IOL交換:重度の場合、異なる設計のIOLに交換する。(光学部径6→7mmのものに交換等)
  • YAGレーザー後嚢切開術:特定の状況で前嚢を修正するためにレーザー治療を使用する。
  • 眼内レンズを90°回転させることで効果がある場合もある。(乱視用レンズではない場合)

当院で実際に効果のあった症例(黄線は追加)

当院で実際に効果のあった症例

① 最初の手術の 4週後。
視力は(1.0)と良好だが術直後より耳側の暗さを訴えていた。
長方形の眼内レンズが横長方向に嚢内に収まっている

② 耳側の暗さの自覚症状が改善しなかったため、レンズ回旋術施行。写真は回旋術後 4週。眼内レンズが縦長方向に収まっている。
視力(1.0)。自覚していた耳側の暗さは術翌日には消失した。

日常生活での注意点
  • 暗い場所での活動: 暗い場所での活動は避け、十分な照明を確保しましょう。
  • 眩しい場所での活動: 眩しい場所では、サングラスや帽子などで目を保護しましょう。
  • 夜間の運転: 夜間の運転は、視界が悪くなるため、特に注意が必要です。